モンルージュ組
 












ファンティーヌ

[運命に抗うコゼットの母]

工藤 志織
レ・ミゼラブル 楽屋便り 
 

運命は、私の意思に関係なく巡る


初めての恋を覚えた夏の光
世界は歌に包まれていたけれど
その光は、闇への入口に過ぎなかった


母親すらいない哀れな出自
温もりも優しさも知らないはずの私に
なぜだろう、目の前の小さな命は
私に愛を教えてくれた



私の姿を見る人は
「惨めな女だ」
と胸中で呟くのでしょう

「そこまでして生きていたい?」
冷たい目で嘲笑うのでしょう


でも、残念ながら
惨めさなどもう既に越えている




大好きな花柄のワンピース
お気に入りのチョーカー
笑顔も、貞節も、女としての喜びも
全部あんた達にくれてやるわ


…私は愚かだから
ここまでの言葉を投げつけても
まだ、夢に見た人生を待ち焦がれる


コゼット。
純粋なその瞳でどうか答えて欲しい
「お母さんの子どもで幸せよ」と





闇がこちらを見ている
導かれるように這いずる冷たい床


今、薔薇色の唇が
熱を帯びて運命に抗う


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